今回は、サイボウズ株式会社の創業者であり、代表取締役社長である青野慶久氏の格言を紹介します。
『「頑張る」というのと「真剣にやる」のとはまったく違う。命がけでやるという覚悟をもって挑むことが「真剣にやる」ということ。』
【出典】サイボウズHP/社長挨拶
サイボウズは、昨今流行している感染症が流行する前からテレワークなど柔軟な働き方を容認していました。
社員の意見を取り入れながらも、業績をあげ続けているサイボウズ青野氏の考え方を、映画プロデューサーであり『ワクセル』の主催者でもある嶋村吉洋氏からの学びとともに紹介していきます。
起業までの経緯
青野氏は大阪大学工学部卒業後、1994年に松下電工(現:パナソニック)へ入社します。
当時、配属された営業企画部では、100名の社員に対してパソコンがわずか3台しかなく、日々の報告書はワープロ専用機で書くという環境だったそうです。
中学・高校・大学とプログラミングが趣味で、パソコンがあるのが当たり前のなか育ってきた青野氏からするとありえない環境で、自前のパソコンを持ち込んで業務をするほどでした。
その後、もっと積極的にコンピュータを扱った仕事に関わりたいと思うようになり、社内ベンチャー制度を利用して、システムインテグレーションの会社の立ち上げに参加し、顧客から依頼を受けたシステムをつくっていました。
そうして日々業務をこなすなかで、青野氏のなかには「自分たちが考えたパッケージソフトをつくりたい」という想いが大きくなっていきました。
パッケージソフトの開発をやろうと思い立った青野氏は、上司の高須賀宣氏と大学の研究室の先輩で当時ジャストシステムで働いていた畑慎也氏に声をかけました。
高須賀氏は5つ上の先輩で社内で若くして成果をあげ、経営企画のプロジェクトで経営を学んでいました。
畑氏は大学院の1つ上の先輩で青野氏が「このひとのプログラミングには勝てないな」と感じるほどの方でした。
しかし、社内では新事業となるためなかなか理解を得られず、それなら起業するしかないと考え起業することを決めたそうです。
好調なすべりだしからの正念場
1997年、高須賀氏を代表取締役とし、サイボウズを設立。
最初はコストを下げるため、青野氏と高須賀氏の出身である愛媛県松山市に2DKで家賃7万円の事務所を構えました。
8月に登記した会社は順調なすべりだしをみせます。
10月にソフト販売を開始すると、12月の段階ですでに黒字に転化したといいます。
順調なすべりだしをした背景には、青野氏が前職で部門の情報担当者をやっていた経験から、顧客が普段の業務において、どんなことに困っていて、どんな機能を必要としていて、どんな価格なら購入するかなどを分かっていたということがありました。
サイボウズは、創業当時から青野氏が社長に就任した2005年頃までは一気に拡大路線を図って積極的にM&Aをおこないますが、その結果、売上は29億円から120億円まで拡大するものの、いくつかの企業が赤字を出してしまい、利益はダウンしてしまいます。
その当時は社員数も急激に増加していましたが、その成長スピードに組織体制が追いついていないのが実情でした。
「ベンチャー企業はがむしゃらに働くのが当たり前」という一方的な考えを社員に押し付けていたため離職率も高く、もっともひどいときで28%に達していました。
【参考】ニッポンの社長/サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久
松下幸之助の格言との出会い
ちょうどそのころ、青野氏は松下幸之助の言葉と出会います。
いつものように立ち寄ったコンビニでなんとなく手を伸ばした『松下幸之助 日々のことば』という、松下幸之助の言葉を365日分まとめた本の最初、1月1日のページにはこう書かれてありました。
『本気になって真剣に志を立てよう。強い志があれば事は半ば達せられたといってもよい』
青野氏はこの言葉を見たときのことをこのように話しています。
『頭に雷が落ちた気がしました。自分は果たして本当に命を懸けて打ち込んでいただろうか…。そう考えたときに、「頑張る」と「真剣になる」はまったく別次元の努力で、自分に不足していたのはこの”命懸けの覚悟”だったと思い知らされました。』
命懸けで取り組むべき目標が定まると、明確な判断基準が出来上がります。
そこからは、事業も本当に必要なものにしぼり、手に負えない事業は手放していきました。
会社の体質も急成長を狙うイケイケのベンチャー体質から、安定した成長が望める企業へと転換していきました。
取り扱っている商品は、常にバージョンアップを図っていく必要がある商品です。
顧客に安定した商品を販売していくためには、勝手知った開発者や営業担当者にできるだけ長く働いてほしい。
その想いから社内体制を変え、社員ひとりひとりにあわせた柔軟な人事制度を採用されています。
サイボウズのHPでは『サイボウズ式~新しい価値を生み出すチームのメディア~』というコンテンツがあります。
さまざまな方と対談し、より柔軟で新しい価値を生み出すチームづくりを目指す青野氏の想いが伝わってきます。
【参考】ダイアモンドオンライン/1冊の本からつかんだ覚悟のコツ
さいごに:嶋村吉洋氏からの学び
映画プロデューサーでもある嶋村吉洋氏が主催するワクセルは多くの方とコラボレートしながら、柔軟に進化を続けています。
青野氏の「真剣にやる」価値観を学び、柔軟に進化できる原因は主催者の嶋村氏のなかにしっかりとした軸があるからだということに気付きました。
嶋村氏もいつも「命懸けで仕事をしている」とおっしゃっています。
命懸けで取り組む目標があり、明確な判断基準があるからこそ、真っ直ぐ走っていけるのだと思います。
わたしも命懸けで取り組む目標を定め、真剣に生きる人生にしたいと思いました。