今回は、前回に引き続き、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどの名だたる大手企業の創業者、現経営者や元経営者たちが共通して「コーチ」として慕った人物、ビル・キャンベル氏について取りあげます。
ビル・キャンベル氏は、大学アメリカンフットボールのコーチ、アップル社の副社長をはじめ、名だたる企業の役員、そして有名な経営者の相談役として活躍しました。
キャンベル氏がメンターとなった名だたる経営者たちが、彼とのエピソードをまとめた本がが「TRILLION DOLLAR COACH(1兆ドルコーチ)」ですが、キャンベル氏がコーチを務めた経営者・企業の業績を考えると、1兆ドルを遥かに超えています。
そんなキャンベル氏ですが、コーチングの方針として「チーム・ファースト」をとても大切にしていました。グーグルなどのベンチャー気質の強い会社のコーチであれば、個人のスキルを尊重しそうですが、あくまでキャンベル氏の方針は「チーム重視」でした。
以下で、ビル・キャンベル氏の「チーム重視」の価値観がわかる格言を紹介します。
「問題そのものより、チームに取り組む」
キャンベル氏の「チーム重視」のエッセンスは、「問題が何か」ということ以上に「チームに誰がいるか、チームは問題を解決できるのか」に重きをおいていることです。
Googleの投資家であり同社の社外取締役を経験したことがあるラム・シュリラム氏は、キャンベル氏が「いきなり問題を解決しようとせず、まずチームに取り組んだ」と話しています。
マネージャーは、とかく目の前の問題にとらわれがちである。コーチはより本質的な問いによってチームを導こうとする。誰が問題に当たっているのか、適切なチームが適所に配置されているか、成功するために必要なものは揃っているか。
キャンベル氏は、こうした価値観を行動にし、実践していました。
「スター」だけではチームにならない
もう一つ、キャンベル氏が大切にしていた特徴的な考え方があります。
チーム作りにおいては、抜群の才能を持った天才を招きたいと思いがちです。
特に当時のシリコンバレーの経営層ではこの傾向が強くありました。
しかし、キャンベル氏の考え方は、
クォーターバックだけでチームを作るんじゃない
というものでした。アメリカンフットボールのコーチ出身のキャンベル氏らしい例えです。
また、コーチの役割として、
どんな人にも限界がある。
肝心なのはメンバー1人ひとりを理解し、何が彼らを際立たせているのかを知り、残りのメンバーとうまく噛み合えるよう手助けすること
とも考えていました。
彼は、メンバーの、今、顕在化している能力だけではなく、マインドを見てその人物の潜在能力も測っていたといいます。
まだ現れていない人の能力を予測できていたのがキャンベル氏の大きな強みだったように思えます。
さいごに:嶋村吉洋氏からの学び
『うまくいくリーダーだけが知っていること』の著者であり、映画プロデューサー、ワクセルの主催者でもある嶋村吉洋氏も、チームのメンバーの力を引き出すことについて、著書の中で述べています。
スキルの高い人を集めるだけではなく、秀でたスキルを持ちかつチームで仕事ができるメンバーでチームを組むことの大切さを、ビル・キャンベル氏、そして嶋村吉洋氏から改めて学ぶことになりました。